孤独な私がおしゃべりしたい時間

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女の貧困は「自業自得」ではなく国の問題だ!!「 東京貧困女子。」

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たった一人で、泣きたくなんかない

女性の貧困問題は自業自得なんかじゃなく、国の問題だ。

  

こんばんは魔女@試行錯誤ブロガー (@korokorokemari) | Twitterです。

最近ニュースなどで取り上げられている「女性の貧困」。

 

あなたは彼女たちの生きざまを自業自得だと思いますか?

自分だけは貧困になんてならないと思っていませんか?

 

私たちは誰でも貧困になる可能性があります。

ここではその理由を解説していきますので、どうか最後までお付き合いくださいませ!

 

東京貧困女子。: 彼女たちはなぜ躓いたのか

東京貧困女子。: 彼女たちはなぜ躓いたのか

 

 

 

"女性の貧困"のイメージ

国全体で問われている貧困問題。

その中でも最近注目されているのが「女性の貧困」です。

 

私はこれまで女性の貧困(というか個人単位の貧困について、真面目に学校に通わなかったり変な男に騙されたり。どちらかと言うと自業自得な面が強いのでは?と思っていました。

 

親に虐待されていて…というケースも見かけますが、あくまで少数派であり、10~20代の頃に甘えたツケが将来の貧困を招くのだ、と考えていました。

 

しかし、この考え方は間違いでした。

女性の貧困の周りには国によって仕掛けられた罠が張り巡らされています。

貧困の土台を、国が積極的に作っているのです。

 

 

一般的な貧困女子のイメージは「風俗嬢」「AV女優」?

お金がない、というと「女なら風俗で稼げるだろ!!」という言葉を耳にすることが少なくありません。むしろ身体で稼ぐ覚悟もないなら大して困ってない、なんていう人も時にはいます…。

 

ですので女性の貧困と言えば、身体で男性相手に稼いでいる人というイメージが強いかもしれません。

 

性産業は意外と明るい?

私は、性産業に興味があるのでAV関連の作品など何冊か書籍を読んだことがあります。

ですが、そうした書籍から伺える「AV女優」は強気だったり飄々としていたりして意外と「貧困」から抱くイメージとはほど遠いです。

 

また、今や「セクシー女優」という呼び方でバラエティーなどに出るタレント的な方も複数いらっしゃって昔の薄暗いイメージとはかなり印象が変わってきています。

 

ではもう「困って身売りする女性」はいなくなったのでしょうか…?

 

「東京貧困女子。」(著:中村敦彦)

 

東京貧困女子。: 彼女たちはなぜ躓いたのか

東京貧困女子。: 彼女たちはなぜ躓いたのか

 

 

 「東京貧困女子。」は私たちに貧困女子のリアルを突き付けてくるノンフィクション作品です。 貧困に喘ぐ女性の現実 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準で2016年4月~連載された記事インタビューを元に再編集+加筆したもの。

 

toyokeizai.net

 

  • 風俗に足を踏み入れてしまった貧困女性
  • 精神疾患を伴う貧困女性
  • 家族との関係性に苦しむ貧困女性
  • 仕事を持っているのに苦しむ貧困女性
  • 離婚したものの年齢制限によって仕事を持てない貧困女性
  • パワハラから負わされた障害で苦しむ貧困女性
  • 子どもの未来を犠牲にしても生きられない貧困女性

 

取り上げられているケースはどれも壮絶で特殊に見えますが、そうなってしまった経緯を聞くと、とても他人事とは思えない世界が広がっています。

 

著者の中村敦彦氏は「ハタチになったら死のうと思ってた AV女優19人の告白」などを執筆。20年以上AV女優や風俗、介護などを通じて「貧困」という社会問題の取材をしているノンフィクションライターです。 

 

 

 身近に潜む貧困:親の奨学金使い込み

作品中で取り上げられているケースの中で、実際に私たちが共感しやすいケースを上げてみます。

 

大学3年生(21)の女性。奨学金返済のため、風俗で働いています。

地方から上京し、家賃は6万円台。学費は親が払っていますが、仕送りが一切ないため、それ以外の費用(およそ15万円)はすべて自分で支払わなければいけません。

 

毎月奨学金が振り込まれる彼女名義の預金通帳は父親が管理、年間100万円の学費は奨学金から父親が支払っている。余る年間120万円は、父親が生活費に充ててるという。

――「東京貧困女子。」より

 

片親で生活が困っているから、奨学金を多めに借りて一部を生活費に充てて…なんて家庭は少なくないんじゃないでしょうか?

 

私の家も、そうでした。学費自体は親族に借りていたのに生活に困るからと奨学金を借りるよう親に言われ、契約しました。契約当初は「お母さんが返すから…」と言われましたが、最近では「アンタの生活にかかったお金なんだから、アンタが自分で返してよ!!!」と繰り返し言われています。

(魔女のくわしい人生についてはこちら⇒【大解剖】魔女はいかにして魔女になったか - 孤独な私がおしゃべりしたい時間)

 

 

地方学生は特にお金がかかる

とはいえ私はすでに社会人ですが、インタビューされている当事者は大学生。月々15万円を学生という本業の他で稼ぐのは簡単なことではありません。

 

通信費や服飾費などコントロールして抑え込める部分もあると思いますが、教材費や家賃などは地方に住む親がイメージする以上にかさみます。

 

簡潔に言えば、親からの仕送りのない地方出身の単身大学生は、水商売か風俗をしなければ、学生生活は送れないということだ。

――「東京貧困女子。」より

 

 

自分世代は逃げ切ったから、と若者に我慢を強いる親世代

 

丁度同時期に目にした返済総額1100万円。奨学金延滞で自己破産の27歳「大学に行ったことを後悔」 | BUSINESS INSIDER JAPANという記事にも似たようなケースが取り上げられていました。

 

「自己破産したら畑を処分しないといけなくなる」

「近所の人にも知られたら体面が悪い」

「返せないのは、給料が安い会社に勤めているからだろう」

「転職するか、戻ってきて公務員を目指したらどうだ」

 

――返済総額1100万円。奨学金延滞で自己破産の27歳「大学に行ったことを後悔」 | BUSINESS INSIDER JAPANより

 

取材を受けている畠山さんが奨学金に絡む(連帯保証人である母親の)自己破産について家族や親せきに相談した際に、かけられた言葉だそうです。

 

親世代は逃げ切った世代であり、「子どもの未来」など考えません自分たちが我慢してきたんだから、お前も我慢しろ。家のために生きろ。と自分たちの古びた価値観を押し付け続けます。

 

 

一体全体なんでこっちが自分の人生を犠牲にして体裁繕ってやらないといけないんだ⁉と思う訳なんですが、この人の目を気にし続ける生き方は最早日本人にかけられた呪いとも言えるほど深く浸透しています。

 

これは自己破産に対する考え方だけではなく結婚などについてもそうです。これについては「40過ぎで結婚していないのはおかしい」を作ったのは誰か - 孤独な私がおしゃべりしたい時間に書いていますのでご覧ください。

 

 

 国家の欲望

このような状況が広がっているものの、国は都会ベースで思考しています。奨学金を受けてもまともに生活できず、学業をおろそかにして道を踏み外す。そして大学を卒業していなければ選べる職業はぐっと狭まります

 

一度このループに入り込んでしまうと抜け出せず、こうしたケースを救済するつもりは今のところ無いようです。

 

それにはある、理由があるようです。

 

貧困を作り、労働力へと組み替える国家

介護の人材不足は深刻で、団塊の世代後期高齢者になる2025年までに38万人から100万人が足りないと言われている。厚生労働省は介護人材不足と失業者対策で2009年から「重点分野雇用創造事業」をはじめている。簡潔に言えば、キャリアや手に職のない失業者をみんな介護職に誘導するということである。

――「東京貧困女子。」より

 

実にシンプルな理屈ですが、国家にとって「仕事が無くて困っている人」「お金が無くて、働けるならどんな職でもいい!!」という人がいてくれないと困るんです。

 

介護職の賃金の低さは連日ニュースで報道されるほど非常に問題視されています。

当然介護職を希望する人も減っていく…。でもそれでは困るんです!!

だって高齢者は年々増えていくんですから。

 

そのため、一定人の「職に困っている人」「お金に困っている人」を作り続けることで介護職への誘導が可能になるのです。

 

これが制度的改善が見られない理由と言えるでしょう。

「介護離職をなくそう!」と言っている口で「家族自治体で介護を!!」と叫んでいる、この二枚舌ぶりがそれを物語っています。

 

すなわち、例え当人の自業自得で貧困に苦しむことになり、その後心を入れ替えたとしても、這い上がることの出来ないシステムがガッチリと彼女たちを押し込めているのです。

 

 

勿論、貧困は女性だけの問題ではない。

ここで指摘される前に述べておくと、当然男性にも貧困の問題はあります。

 

ただ、男性と女性の貧困は本質的に異なっている部分があります。

それは女性は「女性」というだけで男性社会において圧倒的に不利だということです。

 

男性の場合、貧困以前に、そもそも「男である」ということでかなり人生のハードルを上げられたり、それこそ「女、車を持て!!」みたいな男ならではの特殊な圧迫があります。(詳しくは「40過ぎで結婚していないのはおかしい」を作ったのは誰か - 孤独な私がおしゃべりしたい時間に書きましたのでご覧ください)

 

とはいえ、世の中の主導権はどう見ても男性が握っているので「男と女、どっちを優遇する?」みたいな時は男性の方が助かりやすかったりします。個々人で這い上がるのが難しくても「男性」であることは「女性」であることよりもややサポートがあるのです。

 

これに対し女性の場合は「男性>女性」構造がそもそもあるので、「世の中全体が苦しい…男と女、どっちか犠牲にしたい!!」という時は圧倒的に選ばれやすいです。

 

個々人の問題ではなく「女性」というだけで不利、不都合が降りかかる、というケースが男性より多いかと思います。

 

 

 まとめ 貧困は国の問題。一人で悩ませないで。

ここまで書いてきたように、国ベースでの女性の貧困支援強化は望みが薄いです。

じゃあ私たちに出来ることは無いのでしょうか?

 

「東京貧困女子。」でインタビューされていた人の多くが

 

  • 役所に相談したけど冷たくあしらわれた
  • 友人などにはとても相談できない

 

と話していました。

 

これは制度問題以前に、私たちの中の「貧困は自業自得」という偏見によって、彼女たちを冷たい目で見ているせいです。

 

「東京貧困女子。」では東大の大学院を出た女性や官僚の妻になった女性でも貧困に陥ってしまった例が取り上げられています。

 

どんな人でも必ず貧困になる可能性がある社会。悲しいですが、これが私たちの今生きている社会です。

まずはこのことを認識して貧困問題に対する目を変えていかなければならないと思います。

 

ここまで読んでくださってありがとうございました!

魔女@試行錯誤ブロガー (@korokorokemari) | Twitterでした!!