孤独な私がおしゃべりしたい時間

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月平均15冊以上本を読む魔女の読書記録と心に残ったあれやそれ。

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批評を楽しむための一滴の蜜

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他人を罵倒する言葉を入力する私たち

「一億総批評家」なんて言葉もあるくらい、

現代では他人の行動をとにかく「良い」「悪い」と判断したがる人が増えています。

 

 

高見の見物で他人のやることを評価するのはたしかにおもしろいかもしれません。

ちょっとSNSを覗いたら自分と違う意見の人ばかり。

自分と違う点を挙げて勝手に判決を下せばいいのだから簡単なものです。

 

 

一方で、あなたが全く知らない人から

「あなたのやってることはおかしいですよ?」と

突然理由もなく言われたらいい気持ちはしないですよね。

その人と関わることは勿論、発信すること自体が億劫になってしまうかもしれません。

 

 

その最たるものが"クソリプ"と呼ばれるものの一部でしょう。

 

 

こうした背景から「批評=嫌なモノ」となんとなく捉えられがちです。

 

 

しかし「批評」とは本来、こう言ったものではないはずです。

 

 

 批評を読んだ人が、

読む前よりも対象とする作品や作者を

もっと興味深いと思ってくれればそれでいいし、

それが一番大事な批評の仕事だと思っています。

  

これは「お砂糖とスパイスと爆発的な何か」(著:北村紗衣)の中の一節です。

 

 

「批評」とはただ相手をこき下ろすのではなく、

第3者に向けて届けるものである、という主張です。

 

 

今回は批評とは何かを考えながら

「おもしろい批評」をするにはどうしたら良いかを考えていきます!

 

 

 

「お砂糖とスパイスと爆発的な何か」はどんな本?

ワンダーウーマン

ゲーム・オブ・スローンズ

華麗なるギャツビー

アナと雪の女王

ファイト・クラブ

キングスマン

ダウントン・アビー

 

などの有名作品を「フェミニスト」の視点から読み解いた批評集。

 

"フェミニズム"…?と思う方もいるかもしれませんが、

ひとつの観点で複数の作品を深堀しているという点だけでも

とってもおもしろい1冊です。

 

お砂糖とスパイスと爆発的な何か?不真面目な批評家によるフェミニスト批評入門

お砂糖とスパイスと爆発的な何か?不真面目な批評家によるフェミニスト批評入門

 

 

 

一部には「フェミニスト=感情的に怒鳴り散らすメス」と

認識する人もいるようですが、

この本は全くそういった論調ではありません。

 

 

「読み手が対象としている作品に興味を持ってくれるか」 

 

 

それが考えるべきポイントであり、

貶すことは目的ではないからです。

  

この点がこの本のおもしろさの基盤だと私は考えています。

 

著者の北村紗衣さんについて

TBS系で放送中のバライティーマツコの知らない世界」に出演した

Wikipediaの世界」の紹介者としてご存じの方もいらっしゃるかもしれません。

 

 

北村さんはウィリアム・シェイクスピアフェミニスト批評をご専門とされています。

 

 

フェミニスト批評とは作品に秘められている性差別を指摘するなど

フェミニスト」の観点から作品を読み解くことです。

 

 

「お砂糖とスパイスと爆発的な何か」は

フェミニスト」の観点から有名作品を批評した批評集です。

 

 

批評とは呼べない「批評」

 

あと俺に意見して、俺を変えようとしても無理。
だって考えてみ。日常でいきなり着ぐるみかぶって顔も見えへん、名乗りもせんやつが出てきて「お前のここが悪いから変えろ!」とか言われて誰が「はい!わかりました」ってなんねん。
よくその状況で説き伏せられると思うよな。

 

 冒頭で一億総批評家社会について触れましたが、

「総批評家社会」の正体はこれです。

 

 

SNSという"匿名"(実は全く匿名ではない)の笠を着て、

見ず知らずの人に「お前のここが悪いから変えろ!」と通り魔のように宣言し

相手が納得するまで殴りつける。

 

 

引用のツイートでもダルビッシュさんが一蹴していますが

こうしたものは取るに足らない、

相手にするだけ無駄なものと私も思います。

 

 

何故ならこうした言葉を発する人の多くが

どうせ何を言っても相手を受け入れる気がないからです。

 

勝ち負けの精神に囚われるな

どういう意味かと言いますと、

始めから「相手を叩きのめす」ことが目的であって

例え話し合いのうちに同意できそうな箇所があったとしても、

そこには同意せずひたすら叩ける場所を探し続けるのです。

 

 

他人に不躾な言葉を投げつけることの背景には

「勝ち負け意識」があるのではないかと個人的には考えています。

 

 

「有名人に噛み付ける自分」

「シニカルでいられる自分」

 

 

男性学研究の精鋭、田中俊之先生がよく述べられていることですが

"男性が「男らしさ」を証明する方法は、

「達成」と「逸脱」"の2種類だと言われています。

(必要悪?「男らしさ」が猛威を振るう深いワケ | 男性学・田中俊之のお悩み相談室 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準 ほか )

 

例えば成績優秀であれば「達成」、

勉強が苦手でも「ヤンキー化」 という逸脱で男らしさを立脚するというわけです

 

 

「達成」か「逸脱」で自己を実現しようとするのは

男性だけではなく現代人一般に見られる傾向ではないでしょうか…?

 

 

 

同種の「論破」「くだらない議論に勝ちたい」なども

無意味な勝ち負け意識の現れであり

あまり意味のある行為とは思えません。

 

 

批評は「排出」ではなく「吸収」

批評では嫌いな作品はとにかく叩いて貶せばいい

という訳ではありません。

 

 

フェミニスト批評の考え方を身につけることで、

私はハスクリーの『素晴らしい世界』に対する感想を、

ただの嫌いから、興味深い嫌いに変えることができました。

(お砂糖とスパイスと爆発的な何か,北村,2019)

 

 

例え嫌いなものであっても、自分の関心があるテーマ視点で見ることによって

対象を楽しめるようになるのです。

 

 

対象を「どんな切り口」で分析して「何を感じるか」

それこそがおもしろさのポイントなのです。

 

 

「批評」とはただ貶して終わり!!でないのです。

 

 

まとめ おもしろい批評をしよう

批評の役割とは

 

 批評を読んだ人が、

読む前よりも対象とする作品や作者を

もっと興味深いと思ってくれればそれでいいし、

それが一番大事な批評の仕事だと思っています。

(お砂糖とスパイスと爆発的な何か,北村,2019)

 

 

"その作品を知らない人が興味を持つような導き"を与えることです。

 

 

「好きなもの」でも「嫌いなもの」でも批評してOK。

でも「嫌い」だから叩くのではなく、

 

 

自分の嫌いなものにも興味を持ってもらえるようなコメントを残す

 

 

それが批評なのです。

 

興味を持ってくださった方は是非

「お砂糖とスパイスと爆発的な何か」を

手に取ってみてください!!

 

お砂糖とスパイスと爆発的な何か?不真面目な批評家によるフェミニスト批評入門

お砂糖とスパイスと爆発的な何か?不真面目な批評家によるフェミニスト批評入門

 

 

ここまで読んでくださってありがとうございました。

魔女(まじょ)@意識は高くないマン (@korokorokemari) | Twitterでした。